黒鯛工房大阪湾落し込みトーナメント決勝2日目 ゾーンに入ったパイセンと、引っ張られた私

突然ですが、皆さんは「ゾーン」に入ったことがありますか?

または、ゾーンに入った人を間近で見たことがありますか?

私はこれまでにも、何度かそういった場面に出くわしたことがあります。

そして今回の決勝2日目。

私は、ゾーンに入って覚醒した一人の変鯛を、すぐ近くで見ることになりました。

それだけではありません。

その人の集中力に引っ張られるように、私自身もゾーンへ入ることができたのです。

「ゾーンって、漫画じゃないんやから」

「ほんまかいな」

そう思われる方も多いと思います。

しかし、このゾーンという状態は、本当に存在します。

今回の大会決勝に参加された方であれば、誰かが普段とは違う集中状態に入っている場面を見た方もおられるでしょう。

もしかすると、自分自身がそうなっていた方もいるかもしれません。

今回の記事は、ゾーンに入って覚醒した一人の釣り人と、その横で引っ張られるようにゾーンへ入った私自身記事です。

かなーりうろ覚えではありますが、頭の中のハードディスクを整理し、断片的に残っている記憶を引っ張り出しながら、文字にしていきたいと思います。

普段の私は、釣っているときの状況を比較的細かく覚えています。

どこへ落としたのか。

どの深さで食ったのか。

目印がどう動いたのか。

しかし、決勝2日目の中盤から後半にかけては、不思議なほど断片的な記憶しか残っていません(笑)

AdSense

ZONEとは

「ゾーン」とは、一言でいうと、何も考えなくても最高の動きができる状態です。

スポーツ選手がよく言う、

「ゾーンに入った」

という状態がこれです。

例えば野球なら、飛んでくるボールが止まって見える。

釣りなら、

「ここへ落としたら食う」

と感じた場所へ仕掛けを入れると、本当にアタリが出る。

もちろん、本当にボールが止まっているわけでも、未来が見えているわけでもありません。

脳が余計なことを考えず、今必要な情報だけを素早く処理できているため、そのように感じるのです。

集中力が極端に高まり、周囲の音や時間が気にならなくなる。

体が勝手に動いているように感じ、判断が速くなり、迷いが消える。

普段以上の力を発揮しやすくなる。

例えば、黒鯛の落とし込み釣りで考えてみます。

何百回、何千回と壁際へ仕掛けを落としてきた人が、

「今日は2ヒロや」

と感じ、その深さを狙って落とす。

すると、本当にアタリが出る。

これは、単なる勘ではありません。

水の色、潮の流れ、魚の気配、これまでの経験。

本人も意識していないほど多くの情報を、脳が一瞬で整理し、答えを出している状態です。

つまり、ゾーンは魔法ではありません。

これまで積み重ねてきた経験と、極限まで高まった集中力が重なったときに起こる、脳の状態なのです。

ただし、

「ゾーンに入りたい」

と思ったからといって、簡単に入れるものではありません。

技術を十分に身につけていること。

結果ばかりを考えず、目の前の動作へ集中すること。

難しすぎず、簡単すぎない状況に向き合うこと。

そうした条件が重なったとき、練習で身につけた技術を、余計な考えなしに100%近く発揮できる状態に入ります。

それが、ゾーンです。

しらんけど笑

決勝2日目・南港新波止

ここからは頭の中の記憶を引っ張り出しながら、できるだけ当時の状況を再現して書いていきます。

順番や細かい部分に多少の記憶違いがあるかもしれません。

その点はご了承ください。

下見で確認した状況を踏まえ、私の中では一つの作戦ができていました。

まずは白灯台側の川筋。

目印をつけた仕掛けにフジツボをつけ、軽いオモリで自然に落としていく。

川筋でアタリがなくなったら、スリット側へ移動。

柱前やケーソンの継ぎ目で、虫を止めて見せる。

大まかには、そんな作戦です。

決勝初日のアマPでも、私は目印をつけた仕掛けにフジツボを使い、上の層にいる魚を狙いました。

途中で餌を変えず、その釣り方を徹底。

結果、3枚という釣果を得ることができました。

下見では、アマPでも新波止でも、虫、カニ、フジツボ、貝と、さまざまな餌で魚が釣れていました。

要するに、何でも食う。

しかし、何でも食うということは、逆にいえば、どの餌を選ぶべきなのか判断が難しい状況でもあります。

このような大会では、多くの選手が虫やカニなど、動きのある餌を選ぶ傾向があります。

その中で私は、自分が最も得意とする釣りを選びました。

同時に、一番好きな釣り方でもあります。

目印をつけた仕掛けにフジツボをつけ、軽いオモリで自然に落とす。

この釣り方を、最後までやり通す。

そう決めました。

朝一番。

カーブ付近で選手全員が船を降り、準備を始めます。

赤灯台へ向かう人。

白灯台へ向かう人。

スリットを狙う人。

川筋を狙う人。

それぞれが、自分の下見と経験を信じ、狙う場所を定めていきます。

静かではあるものの、周囲には大会特有の緊張感が漂っています。

私は予定どおり、白灯台側の川筋からスタートします。

周囲を見ると、同じ考えの選手がちらほら。

Nさん。

Hさん。

Kさん。

そして私。

もちろん、ほかにも同じ狙いの選手はいます。

開始の合図。

決勝2日目が始まりました。

まず考えたのは、どこから落とすか。

一番先頭まで走り、まだ誰も落としていない、いわゆるサラの場所を狙うのか。

それとも、手前から一か所ずつ丁寧に落としていくのか。

一瞬、判断が遅れました。

その直後。

少し先にいたHさんの竿が曲がります。

「やられた!」

きれいな円を描くHさんの竿。

しかし次の瞬間、竿先が宙へ弾かれました。

バラした!

「うわっ、もったいない!」

いや。

私からすれば、ラッキーなのか?

Hさんとは下見でも一緒になり、ねらいも似ていました。

そのHさんが開始直後に魚を掛けた。

つまり、狙いは間違っていない。

魚はいてる。

 

その事実に、少しだけ気持ちが落ち着きました。

私はHさんを追い越し、先へ進もうとします。

しかし、その先にはKさん。

さらに先にはNさん。

ロープが絡む場所を、順番に狙っています。
そしてHさんが追い越す。

前へ行っても、すでに人がいる。

ふと後ろを見ると、スタート地点付近の川筋が、まだ誰も落としていない状態で残っていました。

私は戻り、その場所を落としていくことにしました。

しかし、アタリが出ません。

 

開始前に大勢が歩いた足音。

多くの人が立っていたことによるプレッシャー。

その影響なのか、魚からの反応がありません。

仕方なく、先に行くメンバーがすでに落としたであろう場所を、手返しよく探っていきます。

仕掛けを入れる。

落とす。

回収する。

また数歩進む。

その途中、先を見るとNさんの竿が曲がっています。

釣っている。

私は少し焦っていたのでしょう。

落とし方が雑になり、アタリを出せないまま時間だけが過ぎていきます。

ようやく先頭集団へ追いつきました。

 

追い越しては、追い越される。

また追い越して、次の場所へ仕掛けを入れる。

すると、またNさんの竿が曲がります。

続いてHさんの竿も曲がる。

完全に二人の流れです。

私はその二人を追い越し、まだ誰も落としていない場所へ仕掛けを入れました。

目印が入る。

アタリ。

掛けた!

しかし、焦りがあったのか、魚は外れてしまいました。

バラし。

その直後、Hさんがまた魚を掛けます。

私はそれを横目に見ながら思いました。

「あかん」

「二人にやられてる」

「完全に置いていかれてるやん(笑)」

早く1枚取らないと。

その気持ちが、どんどん強くなります。

この時点で、私は白灯台先端の階段付近まで来ていました。

誰も落としていない場所は、一通りなくなっています。

このまま先端で粘るのか。

それとも、来た道を戻りながら落とすのか。

判断を迫られました。

 

そのとき。

Hさんの大きな声が聞こえます。

振り返ると、ストリンガーにつないでいた魚が外れてしまったとのこと。

大会中に取った貴重な1枚。

それが、いなくなった。

この出来事をきっかけに、Hさん、Nさん、そして私も、それまでの流れをいったん打ち切ることになりました。

釣り場が少し落ち着きます。

私が掛けてバラした場所。

NさんやHさんが釣った場所。

先ほどまで魚がいたはずの場所が、沈黙しています。

 

Hさんは気分を変えるため、

「赤灯台方面へ行ってみる」

と、スリットを狙いながら白灯台側を離れていきました。

 

 

私も流れを変えるため、フジツボでスリットを狙いながら、いったん荷物置き場へ戻ります。

そこで、スリットを狙っていたRと話をすると、すでに1枚取っているとのこと。

「どうする、俺?」

頭の中で選択肢が回ります。

赤灯台へ行くのか。

餌を変えるのか。

このままフジツボを続けるのか。

Rは、

「スリットでアタリがなくなったから、一回赤灯台へ行ってみる」

とのことでした。

朝一番の時点で、Nさんは4枚。

Hさんは1枚。

ただし、Hさんは2枚ほどバラし、ストリンガーからも1枚外れています。

私は0枚。

バラしは2枚。

数字だけを見れば、完全に出遅れています。

正直、心が折れかけました。

「今日は違うんかな」

「釣り方を変えたほうがええんかな」

迷いが出ます。

それでも、どうしても白灯台川筋が気になりました。

魚はいる。

釣り方も間違っていない。

まだ終わっていない。

私は再び白灯台方面へ向かいながら、川筋を狙うことにしました。

途中でKさんと出会い、状況を聞くと、まだ釣果はないとのこと。

朝一番の激しい動きがうそのように、沈黙の時間帯が続きます。

 

私は手返しを早め、白灯台方面へ進んでいきました。

仕掛けを入れる。

反応なし。

回収して、また進む。

途中にはNさんがいて、一人、真剣な表情で仕掛けを落としています。

私はその横を通り過ぎ、さらに白灯台へ向かいました。

すると、思っていたより人がいません。

スリットのマスの中を狙っているKIKUさんとあと一人だけ。

おそらく、ほかの選手たちは、場を休ませるために先端付近から離れていたのでしょう。

人がいない。

私は、その状況をチャンスだと捉えました。

「白コバを狙ってみよう」

コバ川側へ向かいます。

すると、水面近くに大きな影が見えました。

でっかいエイです。

そのエイが、ふらふらとコバ川を泳いでいます。

さらに、そのすぐ後ろ。

これまたでっかいチヌが、エイについて泳いでいました。

その姿が見えた瞬間、体が勝手に動きました。

エイとチヌの間。

壁際。

水面直下。

私はフジツボを、そっと止めました。

次の瞬間。

ガツンッ!

実際には音など鳴っていません。

しかし、感覚としては、まさにガツンッ。

ひったくるようなアタリでした。

エイの後ろを泳いでいたチヌが、フジツボを食ったのです。

「よっしゃ!!!」

「やっと食った!」

慎重に。

慎重に。

いや、慎重にやりすぎて外れたら嫌や。

だからといって、強引にやってもあかん。

めっちゃ引く。

どないやねん。

早くタモ入れせな!

頭の中は完全にパニックです(笑)

それでも、何とかタモ入れ成功。

網の中へ魚が入った瞬間、ようやく息ができたような気がしました。

1枚目。

ようやく、0が1になりました。

まずは魚をキープ。

そのまま白灯台周辺、階段付近、先端側の川筋を中心に次の魚を探します。

そこへNさんが戻ってきました。

私は、すぐに報告します(笑)

「うわー、やりやがった」

「やられた」

「なんでやねん」

「ほんま、やられたわ」

「どこで?」

「コバ川で、エイチャンスです」

「なんやねん、ほんまー」

「やられた〜、ほんまぁ〜」

散々、罵声を浴びせられました(笑)

最後には、

「これが違うやつやったらブチギレやけど、まあロレちゃんなら許しとこう」

と、お許しをいただきました笑

ここからNさんと二人。

コバ周辺を中心に、川筋、スリット、マスの中を探っていきます。

ネチネチ。

ネチネチ。

少しの変化も見逃さないよう、細かく仕掛けを入れていきます。

私はフジツボ。

Nさんもフジツボ。

しかし、なかなかアタリが出ません。

先ほど魚がいた場所が、再び沈黙しています。

「やっぱりあかんのかなぁ」

そう言いながら、Nさんは餌を虫へ替えました。

そして、マスの中を狙い始めます。

私はすかさず言いました。

「Nさん、ダメですよ!」

「人生、初志貫徹です!」

「やっぱりフジツボですよ!」

するとNさん。

「ちゃうわ。人生は応用や!」

即答です(笑)

しばらく、お互いに自分の釣りを続けます。

そのとき。

「ほら!」

Nさんの声。

振り向くと、竿が大きく曲がっています。

「やられた〜」

「やっぱり応用なんか……」

そう思いながら見ていると、上がってきたのはグレでした(笑)

「くっそー」

「人生は応用やって教えたろうと思ったのに」

とNさん。

その後も、フグ。

アジ。

またグレ。

Nさんの竿には魚が掛かりますが、肝心のチヌではありません。

一方の私は、しばらくアタリすらない状態が続きました。

しかし、階段の少し手前まで来たところ。

目印に変化。

久しぶりのアタリです。

合わせる。

クンッ。

竿先へ伝わる、心地よい突っ込み。

チヌです。

無事にタモへ入り、2枚目を取ることができました。

「Nさん!やりましたよ!」

「なんやと!初志貫徹か!」

「そうです!初志貫徹です!」

私がそう答えると、Nさんはすぐに餌を虫からフジツボへ付け替えました。

そして再び、川筋へ仕掛けを落とし始めます。

 

ここから先は、本当にうろ覚えです。

 

順番や細かい部分が違っているかもしれません。

ただ、あのときの空気感だけは、今でも強く残っています。

私は最初にキープした魚と、今釣った魚。

合計2枚を検寸へ持っていきました。

検寸を終え、急いで釣り場へ戻ります。

戻って、仕掛けを落とす。

Nさんの竿が曲がる。

私にアタリ。

乗らない。

また私にアタリ。

乗らない。

Nさんにアタリ。

外れる。

私にアタリ。

外れる。

次はどちらが掛けるのか。

Nさんか。

私か。

二人の間に、言葉にしなくても分かる勝負の空気が生まれていきます。

Nさんにアタリ。

今度は掛けた。

竿が曲がる。

その頃から、Nさんの集中力が明らかに変わっていました。

話しかけられないような雰囲気ではありません。

冗談も言う。

笑いもする。

しかし、仕掛けを落とした瞬間、すべての意識が水中へ向かっています。

 

その集中力に引っ張られるように、私自身の感覚も研ぎ澄まされていきました。

視界が広がっているのに、見ているのは目印だけ。

周囲の状況も分かる。

しかし、余計な音は入ってこない。

もう、何というか。

ビンビンなんです。

バラしたらどうしよう。

緊張して体が動かなかったらどうしよう。

そんな不安が消えていきます。

自分の釣りに対する心配がなくなる。

落としたい場所へ仕掛けを入れる。

目印を見る。

変化が出たら、自然に手が動く。

ただ、それだけ。

そして

Nさんが魚を検寸へ持っていったタイミングでした。

私は、なぜか確信しました。

「よし。釣れる」

根拠はありません。

しかし、釣れるとしか思えませんでした。

私はテクテクと、ある場所へ向かいます。

そこで止まり、サッとフジツボを落とす。

ハリスが潮になじむまで、我慢する。

1個目の目印が入る。

目印を壁際から少し外へ払う。

目印は25センチ間隔で6個。

一つ。

二つ。

三つ。

最後の目印が水中へ入る直前。

速度が、一瞬だけ速くなりました。

 

考えるより先に、竿を持つ手が動きます。

合わせる。

魚の重みが竿へ乗る。

その感触が、腕から全身へ伝わっていく。

魚を掛けた喜びより先に、

「やっぱりおった」

という感覚がありました。

迷いなくやり取りし、そのまま難なくタモ入れ。

 

Nさんには、朝一番に取った4枚の差があります。

初日からの合計だと1枚差なので

 

「もう少しで届く」

「いける」

「まだいける」

そう思いました。

あと1枚。

さらに、もう1枚。

そこまで取れば、Nさんを超えられる。

その頃、魚が釣れている場所を嗅ぎつける能力が異常に高いK・Kの二人も現れました。

そして、すぐに魚を掛けます。

それを見たNさんと私は、

「うわっ」

「ハレンチ学園の時合いや」

と笑いました。

魚が一気に動き始めています。

そして、またNさんが掛ける。

「マジか!」

その直後、私はバラす(笑)

そこへHさんも戻ってきました。

Hさんも魚を掛けます。

しかし、上がってきた魚は規定サイズに少し届かない。

「惜しい!」

大会なので、全員がライバルです。

1枚の魚で順位が変わる。

自分が釣り、相手には釣ってほしくない。

本来なら、そう考えてもおかしくありません。

しかし、あの時間だけは違いました。

Nさんが釣る。

私も釣りたくなる。

私が釣る。

Hさんの集中力が上がる。

Kさんたちが掛ける。

周囲全体の熱が、さらに高まっていく。

お互いの釣りが、お互いの集中力を引き上げている。

そんな感覚でした。

自分が釣れたら、もちろんうれしい。

でも、Nさんが釣ってもうれしい。

Hさんが釣ってもうれしい。

Kさんたちが釣っても、なぜかうれしい。

誰かの竿が曲がるたび、

「まだ魚はいる」

「まだ釣れる」

その確信が強くなっていくのです。

周囲の状況が、すべて手に取るように分かる。

潮の動き。

人の位置。

魚が食っている場所。

次に落とす場所。

「ここへ落としたらアタリが出る」

そう思った場所へ仕掛けを入れると、本当にアタリが出る。

釣れる。

その確信があるのです。

Hさんが、再び1枚釣ります。

今度は規定サイズ。

Hさんの表情が変わりました。

「もしかしたら、まだいける」

闘争心へスイッチが入ったように見えます。

その直後。

今度は私が釣る。

さらにNさんが竿を曲げる。

そして、私にもまたアタリ。

誰かの竿が曲がり、また誰かが掛ける。

暑い。

気温は高く、汗はダラダラ。

体は間違いなく疲れているはずです。

しかし、疲れを感じません。

気持ちはどんどん高揚していきます。

「まだいける」

「まだまだいける」

「次の1枚で変わる」

ここで1枚取れば……。

しかし、その場面で竿を曲げたのは、Nさんでした。

魚を掛け、確実に取り込んでいく。

その姿を見た瞬間、なぜか私の口から出てきた言葉は、

「やった!!」

「すげぇ!!」

でした。

悔しいより先に、喜びが出ました。

 

ここで勝負あり。

ゾーンに入ってから釣った枚数だけを見れば、同じだったと思います。

しかし、朝一番につけられた4枚の差を、最後まで埋めることはできませんでした。

私はNさんに、完全に釣り負けました。

競技終了。

張りつめていた空気が、ゆっくりと緩んでいきます。

そのとき、ふとNさんの姿が目に入りました。

なぜか、感動して涙が出てきました。

ほんのちょっとだけですよ(笑)

 

なんでやろ。

見た目は、ほんまに普通なんです。

「終わった〜」

「疲れた〜」

という、大会が終わったあとの、よくある釣り人の姿です。

もっと言えば、普通のおっさんです笑

しかし、そのときのNさんは、なぜかギラッギラに輝いて見えました。

 

めちゃくちゃ、かっこよかった。

そのNさんから、

「楽しかったな!」

と言われました。

その瞬間、私は一瞬、その姿に見とれてしまいました。

一瞬だけですよ(笑)

そして自分の結果よりも、うれしさが込み上げてきました。

 

決勝という最高の舞台。

その舞台で、最高の先輩たちと一緒に戦うことができた。

魚を探し、仕掛けを落とし、竿を曲げ合った。

その喜びと興奮で、全身が埋め尽くされていました。

結果

結果は、皆さんもご存じのとおり、Nさんの優勝。

私は二歩及ばず、3位という結果になりました。

私自身、実力も経験年数も、Nさんには到底及びません。

同じ土俵で語ること自体、おこがましいことかもしれません。

ただ、Nさんと私の釣り方には、比較的共通している部分があります。

一昨年の二次予選では、Nさんも私も、その釣り方を選び、苦い思いをした経験があります。

もちろん、

「そんなん、お前が勝てるわけないやろ」

と思う方が大半かもしれません。

それでも私自身、この釣りを始めてから10年間、人一倍釣り場へ通い、竿を出し、腕を磨いてきました。

おごりもありました。

絶望したこともありました。

もちろん、喜びや楽しさも、たくさんありました。

 

さまざまな経験を乗り越えながら、今の自分の釣り方を作ってきました。

そんな中で、黒鯛工房大阪湾落し込みトーナメント決勝という、素晴らしい舞台に立つことができました。

 

落とし込み釣りという文化を作り上げてきた先輩たちと、同じ場所に立つ。

少しでも肩を並べて、同じ魚を狙う。

そして、自分が得意とする釣り方で、正面からガチンコ勝負をする。

 

憧れていた先輩と本気で競い合い、必死で食らいついていく。その時間の中で、自分の実力が一段階引き上げられていくのを、はっきりと感じました。

これほど興奮する経験は、なかなかありません。

 

結果として、そのガチンコ勝負では、ゾーンに入ったNさんに釣り負けました。

それでも、周りから何を言われようと、この決勝を経験したことで、私はさらに強くなれたと自負しています。

 

ほかの競技やスポーツであれば、10年続ければベテランと呼ばれることもあります。

しかし、この落とし込み釣りに関していえば、10年の私はようやくスタートラインに立てた程度なのだと痛感しました。

それほど、この釣りは深い。

逆にいえば、この年齢になっても、まだまだ伸びしろがあるということです。

 

今から落とし込み釣りを始める人には、伸びしろしかありません。

始めて数年の人であれば、これからもっともっと上達できます。

 

釣り初心者の方も、最初はアタリが分からないかもしれません。

どこへ落とせばよいのか、何が正解なのか分からないこともあると思います。

 

しかし、釣り場へ通い、何度も仕掛けを落とし、一つずつ経験を重ねていけば、それまで見えなかったものが少しずつ見えるようになります。

 

私自身、10年続けても、まだ知らないことばかりです。

そんな最高の釣りを知ってしまったら、もう一生やり続けるしかありませんね(笑)

 

来年は、今回起こしてしまった眠れる獅子たちがゾーンに入らないよう、私も心理攻撃を覚えないといけません(笑)

 

 

とにもかくにも、この素晴らしい大会を開催していただいた黒鯛工房の皆さま。

落とし込み釣りという文化を作り上げてきた先輩方。

予選から決勝まで、大会に参加したすべての選手の皆さん。

大会に協力していただいた渡船関係者の皆さま。

そして、この釣りを愛するすべての皆さんに、心から感謝します。

これからは、私自身が釣りを楽しむだけでなく、この落とし込み釣りを次の世代へ残していく活動にも、力を入れていきたいと思います。

西田パイセン、優勝おめでとうございます!

今度、焼肉をおごってください。

最高に楽しい時間を、ありがとうございました。

そして、また下見から手伝ってください(笑)

最後まで諦めず、真剣に釣りと向き合って、本当によかった。

追記

今回の大会の中でも、最も気持ちがこもった決勝2日目の記事を、興奮が冷めないうちに先に文章にしました。

決勝初日の記事も、読んでみたいという声があれば書いていきたいと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

ちなみに、決勝の2日間は、どちらもフジツボで最後までやり切りました。

初志貫徹です!!