【あとがき】2026年黒鯛工房 第22回大阪湾落し込トーナメント決勝を終えて
あとがき
初志貫徹の釣り
第22回黒鯛工房大阪湾落し込みトーナメント決勝が終わり、腑抜けになったまま、早くも4日が経ちました。
ようやく少しずつ現実の世界に戻ってきたので、このあとがきを書いています。
とはいえ、まだ完全には戻っていません。
体は仕事へ行っていますが、頭の中では目印が入ったり、魚を掛けたり、バラしたり、先輩が竿を曲げたりしています。
おそらく、しばらく使い物になりません(笑)
今回の大会に向けて、できる限りの下見へ行きました。
川筋を見て、スリットを見て、午前に行き、午後にも行き、餌を変え、棚を変え、時間帯による魚の動きを考える。
水曜日に新波止へ行き、金曜日にアマPへ行き、土曜日も日曜日も決勝で釣り場へ行く。
大会に出場するための練習なのか、単純に釣りへ行きたいだけなのか、途中から自分でも分からなくなっていました(笑)
それでも、決勝で少しでも良い釣りをするためには、実際に釣り場へ立ち、自分の目で状況を確かめるしかありません。
全力で下見に行きました。
仲間と情報を出し合い、釣り方を話し、同じ場所へ何度も通いました。
そして、全力で決勝へ臨みました。
最高の舞台で、最高の先輩たちと、最高に熱い戦いをすることができました。
そりゃあ、燃え尽きます。
体もあちこち痛い。
頭もぼんやりしている。
心も空っぽ。
完全に満身創痍です(笑)
しかし、これほど一つのことへ真剣になり、終わった後に何も残らないほど力を出し切れる経験は、なかなかありません。
結果だけではなく、決勝までの時間も含めて、本当に濃い大会でした。
今回の決勝で、私が一番大切にしたこと。
それは、自分の釣りをやり切ることでした。
決勝初日の尼崎フェニックス。
そして2日目の南港新波止。
私は2日間とも、フジツボを使った上層の釣りを中心に戦いました。
風が当たり、水面がバシャバシャするスリット。
軽い仕掛けを操り、目印で餌の軌道を確認しながら、上の層にいる魚を狙う。
2日目の新波止川筋でも、目印を使い、フジツボを自然に落としていく。
ほかの餌に変えれば釣れるかもしれない。
もう少し深い棚を狙ったほうがよいかもしれない。
虫なら食うかもしれない。
カニなら、違う魚を拾えるかもしれない。
大会中、何度も迷いました。
周囲で虫やカニを使った選手が魚を掛ければ、当然気持ちは揺れます。
自分だけアタリが出ない時間が続けば、
「ほんまにこのままでええんか?」
と考えます。
大会ですから、こだわりを貫いて釣れなければ、ただの頑固なおっさんです(笑)
しかし今回の私は、下見で感じたこと、自分が積み上げてきた経験、自分が得意としてきた釣り方を信じることにしました。
もちろん、何も考えずに同じことを続けたわけではありません。
落とす場所を変える。
錘の重さをG2からG3に変える。
餌をなじませる時間を変える。
狙う棚を少し調整する。
同じフジツボでも、状況に合わせて釣り方を変えながら、自分の軸だけは変えない。
その結果、決勝の2日間をフジツボでやり切ることができました。
最後まで自分の釣りを信じることができた。
これは今回の順位と同じくらい、私にとって大きなことでした。
初志貫徹。
言葉にすれば簡単ですが、大会中にこれをやり切るのは、思っている以上に難しい。
釣れなければ不安になる。
周りが釣れば焦る。
順位を意識すれば、さらに迷いが出る。
だからこそ、最後まで信じてやり切れたことは、これからの自分の釣りにも必ずつながると思っています。
そして、今回の大会を通して、もう一つ強く感じたことがあります。
釣りは一人です。
竿を持つのも自分。
仕掛けを落とすのも自分。
アタリを見極めるのも、魚を掛けるのも、バラすのも自分です。
大会になれば、自分の釣果は自分で出すしかありません。

しかし、釣りは一人であっても、決してひとりではありません。
一緒に下見へ行く仲間がいる。
釣り方について話せる仲間がいる。
うまくいかなかったときに笑い合える仲間がいる。
魚を掛けたとき、自分のことのように喜んでくれる人がいる。
大会という緊張する場所で、ふと後ろを振り向いたとき、知っている人がいる。
たったそれだけのことが、ものすごく大きいのです。
大会中は、常に集中しています。
周囲の選手も本気です。
一枚の魚で順位が変わり、一度のバラしが結果を大きく左右します。
自分の判断が正しいのか。
この場所でよいのか。
餌は合っているのか。
頭の中には、いろいろな考えが浮かびます。
そんな中で、ふと後ろを振り向いたときに、少し話ができる人がいる。
「どう?」
「全然あかん」
「こっちもウ○コや」
そんな短い会話だけでも、少し気持ちが楽になります(笑)
逆に、振り向いても誰もいない。
誰とも話せない。
自分の中だけで不安を抱えながら釣りを続ける。
この二つでは、精神的な負担がまったく違います。
もちろん、仲間が魚を釣れば焦ります。
先に4枚も釣られたら、できれば見なかったことにしたいです(笑)

「お願いやから少し休んでくれ」
「もう十分やろ」
と思うこともあります。
しかし、仲間や先輩が魚を掛ける姿を見ると、
「まだ魚はいる」
「まだ釣れる」
「自分もいける」
という気持ちが生まれます。
誰かの集中力が高まれば、その空気が周囲にも伝わっていく。
誰かが魚を掛ければ、周りの動きも変わる。
そこから時合いが始まり、全員の集中力がさらに高まっていく。
今回の決勝2日目は、まさにそのような時間でした。

憧れていた先輩たちと本気で競い合う。
その釣りを間近で見る。
自分も負けたくないと、必死で食らいつく。
すると、自分一人で釣りをしているときには出せなかった集中力や判断力が引き出される。
自分の実力が、一段階引き上げられていく。
今回の決勝では、その感覚をはっきりと味わうことができました。
一人で黙々と練習する時間も必要です。
しかし、同じ目標を持つ仲間と練習し、競い合い、意見を交わすことで、自分だけでは気づけなかったものが見えるようになります。
自分では普通だと思っていたことを褒められることもあれば、自信を持っていた部分が、先輩と比べると全然足りていなかったと気づくこともあります。
釣り方だけではありません。
大会への向き合い方。
状況の読み方。
切り替えの早さ。
集中力。
魚を掛けた後の冷静さ。
あらゆる部分で刺激を受けます。
仲間と練習し、先輩と競い合う。
その相乗効果によって、自分の水準が少しずつ引き上げられていく。
だからこそ、この大会には、一人では得ることのできない成長があります。
正直に言えば、私はこの大会で勝ちたいです。
初めて出場した頃は、決勝へ進むだけで十分でした。
決勝の舞台に立てただけでうれしい。
先輩たちと一緒に釣りができるだけで満足。
最初は、本当にそう思っていました。
しかし、一度決勝を経験すると、次は魚を釣りたくなる。
魚が釣れると、次は上位へ入りたくなる。
上位へ入ると、次は優勝したくなる。
人間とは、本当に欲深いものです(笑)
ただ、この大会は、
「勝ちたい」
と思ってからが本当に難しい大会です。
決勝へ進むだけでも簡単ではありません。
予選には、多くの経験者や実力者が参加します。
その中を勝ち抜き、ようやく決勝へ進むことができる。

そして決勝では、落とし込み釣りを長く続けてきた選手、過去に何度も結果を残している選手、黒鯛工房のテスターやスタッフと同じ舞台で戦うことになります。
下見へ行けば勝てるわけではありません。
釣り方を知っていれば勝てるわけでもありません。
当日の魚の動き。
潮。
風。
場所。
周囲の選手。
一度の判断。
一度のバラし。
さまざまなものが重なって、初めて結果につながります。
その中で今回、3位という結果を残すことができました。
もちろん、素直にうれしいです。
自分がこれまで続けてきた釣り。
下見で考えてきたこと。
2日間やり切ったフジツボの釣り。
それらが結果につながったことは、自信になりました。
胸を張ってよい結果だと思います。

でも、本音を言えば、やはり優勝したかった。
3位になれたから十分。
先輩と競えただけで満足。
そう言えば、きれいにまとまります。
しかし、実際には悔しい。
優勝した西田パイセンの釣りは、本当にすごかった。
決勝2日目、朝からつけられた差を追いかけ、途中では手が届くかもしれないと思いました。
ゾーンに入り、自分の釣りができた。
それでも、最後まで追いつくことはできませんでした。
完敗です。
競技が終わった瞬間は、悔しさよりも、
「すげぇ」
という気持ちが勝っていました。
そして、その姿を見て感動もしました。
しかし、大会が終わって数日が経つと、
「あのバラしが取れていたら」
「あの時間にもう一枚取れていたら」
「あそこで違う判断をしていたら」
と、いろいろ考えてしまいます。
釣り人の悪いところです(笑)

ただ、この悔しさがあるから、また釣り場へ行けるのだと思います。
悔しくなければ、ここまで真剣に下見へ通わない。
勝ちたいと思わなければ、自分の釣りをここまで深く考えない。
今回の3位は、ゴールではありません。
優勝へ少し近づいたことを確認できた結果であり、同時に、まだ足りないものを教えてくれた結果でもあります。
落とし込み釣りを始めた頃、3年も続ければ熟練者になれると思っていました。
3年もやれば、ある程度は何でも分かる。
そんなふうに考えていた時期もあります。
しかし、10年続けた今でも、私はまだまだ若輩者です。
魚を釣れば釣るほど、分からないことが増える。
経験を積めば積むほど、先輩たちのすごさが分かる。
以前は見えなかった技術や判断が、少しずつ見えるようになり、そのたびに自分との差を知る。
ただ、それは絶望ではありません。
この年齢になっても、まだ伸びしろがあるということです。
まだ上手くなれる。
まだ強くなれる。
まだ知らない釣りがある。
そう思えるものに出会えたことは、本当にありがたいことです。

今回、眠れる獅子の先輩たちを、完全に起こしてしまいました。
できれば、もう少し寝かせておきたかった。
薄い毛布でも掛けて、
「まだ朝じゃないですよ」
と言っておけばよかった(笑)
しかし、起きてしまったものは仕方がありません。
来年は、今年以上に恐ろしい大会になるでしょう。
その前に、こちらも少しでも強くならないといけません。
釣りの技術だけでは足りません。
来年は、先輩がゾーンに入る前に話しかける。
仕掛けを作っている横で焼肉の話をする。
集中し始めたら、昔の恥ずかしい話を思い出させる。
真っ向勝負で勝てない場合は、心理戦も必要です(笑)
もちろん冗談です。
多分。
今回の大会に向け、一緒に下見へ通ってくれた仲間。
大会中に声をかけてくれた皆さん。
本気の釣りを見せてくれた先輩方。
大会を開催してくださった黒鯛工房の皆さま。
協力してくださった渡船関係者の皆さま。
そして、予選から決勝まで一緒に戦ったすべての選手の皆さん。
本当にありがとうございました。

釣りは一人です。
しかし、ひとりではありません。
一緒に練習する仲間がいる。
本気で競い合える先輩がいる。
後ろを振り向けば、話のできる人がいる。
その安心感と刺激が、自分の力を引き出し、これまでより一段高い場所へ連れていってくれました。
今回の結果に満足はしていません。
3位はうれしい。
でも、優勝したかった。
だから、また真剣にこの釣りと向き合います。
まずは、燃え尽きた体と心を少し休ませます。
そして回復したら、また釣り場へ行きます。
おそらく回復する前に行くと思いますが(笑)
迷いながらも、自分の釣りを信じ、フジツボで上層を狙い続けました。
最後まで変えなかった自分の軸。
たまには自分自身を褒めてみようと思います笑

さいごに伝えたいこと
最後に、今回大会に参加された皆さん、そして、まだこの大会に参加したことがない皆さんへ、私が伝えたいことがあります。
それは、何事にも真剣に向き合うことの大切さです。
大会に出れば、思いどおりにいかないことがたくさんあります。
下見では釣れていたのに、本番ではまったくアタリが出ない。
自分が狙っていた場所に、先にほかの選手が入る。
魚を掛けてもバラしてしまう。
周りの選手が次々と魚を釣る中で、自分だけが取り残されていく。
「今日はもう無理なんちゃうか」
そんな気持ちになることもあります。
実際、今回の私も何度も心が折れかけました。
それでも、そこで諦めず、最後の一投まで自分にできることをやり切る。
自分の考えてきたことを信じ、目の前の一か所へ、もう一度丁寧に仕掛けを落とす。
その一投が、結果を大きく変えることがあります。
もちろん、最後までやり切ったからといって、必ず魚が釣れるわけではありません。
真剣に下見をしたからといって、必ず勝てるわけでもありません。
努力すれば、必ず報われる。
そんな簡単で、きれいな話ではないと思っています。
しかし、結果がどうであったとしても、最後まで真剣に向き合った経験は、決して無駄にはなりません。
自分がどこまでやれたのか。
何が足りなかったのか。
次に何をしなければならないのか。
本気で向き合った人にしか、見えないものがあります。
そして、真剣に取り組んでいる姿は、自分が思っている以上に周りへ伝わっています。
特別な言葉はいりません。

「俺は頑張っている」
と、自分から説明する必要もありません。
暑い中、黙々と仕掛けを落とし続ける姿。
魚が釣れなくても、最後まで場所を探し続ける姿。
バラしても気持ちを切らさず、もう一度仕掛けを作り直す姿。
仲間が魚を掛けたときに、自分のことのように喜ぶ姿。
そうした姿を、周りの人はちゃんと見ています。
真剣な姿には、言葉がなくても人の心を動かす力があります。
今回、私が先輩たちの釣りを見て心を動かされたように、自分の姿も、知らないうちに誰かへ何かを伝えているのかもしれません。
大人になると、何かに本気になる機会は、意外と少なくなります。
仕事や生活に追われ、失敗しないことや、無難に終わらせることを優先するようになります。
悔しくて眠れない。
勝ちたくて何度も同じ場所へ通う。
結果が出た瞬間、体が震えるほど喜ぶ。
負けた相手を心から「すごい」と思う。

そんな、心の底から痺れるような出来事は、大人になるほど少なくなっていきます。
だからこそ、私はこの大会が好きなのだと思います。
年齢も仕事も立場も違う大人たちが、一枚の黒鯛を本気で追いかける。
汗だくになり、息を切らし、ときにはバラして天を仰ぐ。
普段は立派な大人として生活している人たちが、一枚の魚に本気で一喜一憂する。
冷静に考えれば、なかなか変鯛な光景です(笑)
しかし、それだけ本気になれるものがあるということは、とても幸せなことではないでしょうか。
これは、釣りや大会だけの話ではありません。
仕事でも、日常生活でも同じです。
すぐに結果が出なくても、諦めずに続けること。
周りの状況に流されず、自分が決めたことをやり切ること。
うまくいかなかった原因を考え、次の行動へつなげること。
一人で抱え込まず、仲間と助け合うこと。
そして、誰かの真剣な姿から刺激を受け、自分も一段上へ進むこと。
大会で学んだことは、そのまま仕事にも、日常にも、ひいては人生にも通用することだと思っています。
まだ大会へ参加したことがない方の中には、
「自分にはまだ早い」
「もっと上手くなってから出よう」
「知っている人がいないから不安」
そう思っている方もおられるかもしれません。
しかし、最初から自信を持って大会へ出られる人なんて、ほとんどいないと思います。
私自身も、初めから勝てると思って参加したわけではありません。
大会に出て、自分より上手い人の釣りを見て、自分に足りないものを知る。
悔しい思いをして、また練習する。
その繰り返しの中で、少しずつ成長してきました。
参加しなければ分からない緊張感があります。
参加しなければ出会えない仲間がいます。
参加しなければ味わえない悔しさと喜びがあります。
そして、そのすべてが、自分の釣りを強くしてくれます。

すでに大会へ参加されている皆さんたちは真剣に釣りに向き合っていると思います。
それでも、次の大会では、今回よりもう一歩だけ真剣に向き合ってみてほしいと思います。
諦めずに最後までやりきってみてください。
下見をもう一日増やすことかもしれません。
苦手な釣り方を練習することかもしれません。
一度決めた釣りを、最後まで信じ抜くことかもしれません。
その一歩が、これまでとは違う景色を見せてくれるかもしれません。
勝っても負けても、最後に、
「自分はやり切った」
と思える大会にしてほしい。
私自身も、次は今回以上に真剣に向き合います。
3位になれたことは、素直にうれしい。
しかし、やはり優勝したかった。
その悔しさをごまかさず、次の一歩につなげていきます。
何歳になっても、真剣になれる。
何歳になっても、悔しがれる。
何歳になっても、仲間と競い合い、成長できる。
そして何歳になっても、自分の可能性を信じることができる。
そんな経験をさせてくれる、この落とし込み釣りと、この大会に出会えたことに感謝しています。
最後まで諦めないこと。
目の前の一投に、真剣に向き合うこと。
そして、自分が決めた釣りを最後までやり切ること。
これからも私は、この気持ちを忘れずに竿を出していきたいと思います。
この黒鯛落とし込み釣りを次世代に残していくために。






